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京都地方裁判所峰山支部 昭和43年(モ)9号 判決 1968年11月05日

申請人 総評全国金属労働組合京滋地方本部日本計算器支部

被申請人 日本計算器株式会社

主文

当裁判所が昭和四三年(ヨ)第六号仮処分命令申請事件につき同年五月二三日なした仮処分決定は、これを認可する。

訴訟費用は、被申請人の負担とする。

事実

第一当事者双方の求める裁判

(申請人)

主文第一項同旨の判決

(被申請人)

当裁判所が昭和四三年(ヨ)第六号仮処分申請事件につき同年五月二三日なした仮処分決定は、これを取消す。

申請人の本件仮処分の申請を却下する。

訴訟費用は、申請人の負担とする。

との判決および仮執行の宣言

第二申請人の主張

一  (一) 申請人は、被申請人会社峰山製作所に勤務する労働者によつて昭和二三年に結成された企業別労働組合であつて、現在の組合員は三四〇名である。

(二) 労働者にはその生活を守るため憲法第二八条により団結権、団体交渉権および争議権が保障されている。

(三) わが国の労働組合の組織形態は企業別組合が多数である。申請人もそうである。企業別組合においては、横断的組合に比し、使用者からの不当支配介入をうけやすいので、その団結と統一を守るためには、職場での組合活動がとくに保障されなくてはならない。そして、職場での組合活動を行うためにはその連絡場所ともいうべき組合事務所が会社構内にあり、従業員である組合員が自由に容易に出入できるものでなければならない。かくしてはじめて憲法で保障している団結権は実質上保障されたといえる。

(四) ところで、申請人は、永らく被申請人会社峰山製作所構内に組合事務所をもち、その出入は会社構内を通行してまつたく自由にしており、組合員は、一度会社の門を出てから組合事務所に出入するといつたことはまつたくなく、自己の作業場から直接容易に組合事務所に出入できたのである。しかるに、被申請人は、昭和四三年五月一二日突如右組合事務所の出入口にあたる別紙図面表示の赤斜線部分に、高さ二米一〇糎の長さ五米五糎に及ぶ鉄柵を設け、申請人の組合員が作業場から直接容易に組合事務所に出入するのをまつたく不可能にしてしまつた。

(五) また、労働組合が如何なる範囲の労働者と団結するかは組合がまつたく自由に決定すべき事柄であつて使用者の介入すべきことではない。しかるに、被申請人は、従来の労使慣行をまつたく一方的に無視し、同月一四日から従業員に身分証明書を携帯させ、会社の正門前に新たにガードマンをおき、他の労働組合の組合員は一切構内に入ることを拒否している。そのため申請人としては従来のように他の労働者と思うように連絡がとれなくなつている。このことは被申請人が申請人の団結権を実質的に侵害していることになる。

(六) 以上のとおり、申請人は、被申請人によつて団結権の行使を妨害されているので、その排除を求める権利がある。

二  (一) 被申請人は、合理化を推進するため活溌に活動している組合の破壊を企図し、昭和四三年一月には申請人組合の前委員長糸井貢、書記長大江国雄を抱き込み、それぞれ人事課長、勤労課長に抜てきし、組合弾圧対策に当らせている。また、同年五月には組合執行委員長の今西久和の降格をし組合との団体交渉を不当に拒否している。この団交拒否に対しては申請人は地労委に不当労働行為の救済を申立てている。

(二) 右のような情勢下に、同年五月一〇日申請人が職場集会を開こうとしたところ、被申請人は他労組の組合員三名が参加しているとの理由で、職制をして会社正門前に逆ピケを張らせ、申請人がこれに対抗して他労組員を会社構内に入れ、構内広場で集会を始めようとするや、被申請人は、職制をこの集会に介入させ、そこで傷害事件をでつち上げ、峰山警察署に組合員を告訴し、これを機会として申請人組合を暴徒視し会社構内での集会を一切認めず今日にいたつている。

(三) 被申請人は、同月一七日右事件につき勝手に懲戒委員会を開催し、各組合員に対し個別的に同委員会への出席を強要し、従わないなら業務命令違反と威迫している。また、大江勤労課長をして、作業中、組合員を呼びつけさせ、寺田峰山製作所長は、じきじきに警察へ参考人として出頭してくれるよう強要している。

このような被申請人の組合員各個に対する呼びかけの中で、組合員のうちにも動揺があらわれ、脱落者が一二名を数えるにいたつている。

(四) このような組合の団結権が被申請人によつて露骨に侵害されている中で、申請人において前記の被申請人の設けた鉄柵のため組合事務所に各組合員が作業場から容易に手取り早く往来できないことは致命的である。また、他の労組員は会社構内に入れなくなつてから、他の家の軒下を通り下水を渡つて組合事務所に来ているがこれも著しく不便である。

(五) なお、別紙図面表示の組合事務所の裏の水路から公道(府道)までの間の土地は、岩井、藤原、山本らが所有するものであつて被申請人の所有ではない。

また、被申請人主張のように、右土地を申請人の組合が自由に出入する権利を有するかどうかは知らないが、しかし、図面表示の岩井方居宅の東側に、本件仮処分による鉄柵除去後、被申請人が柵を設けたので、現在は右土地を通行することはできない。

三  申請人は、このような被申請人の妨害行為を排除すべき訴えを準備中であるが、さしあたり回復し難い損害を防ぐため、当庁に、「被申請人は別紙図面表示の赤線部分の鉄柵を撤去しなければならない。被申請人において本命令送達後二四時間以内に前項記載の鉄柵を撤去しないときは、申請人は執行官に委任してこれを撤去させることができる。被申請人は、申請人および申請人がその組合活動のため必要として認めた者が被申請人会社構内を通つて申請人組合事務所へ行くのを妨害してはならない。」旨の仮処分申請をし、当庁は、同月二三日「被申請人は、別紙図面表示の赤線部分に施した鉄柵を除去し、申請人の組合員が被申請人会社構内を通行して申請人組合事務所に立入ることを妨害してはならない。被申請人において本命令送達の日から二日内に右鉄柵を除去しないときは、申請人の委任した執行官は右鉄柵を除去することができる。」との仮処分決定をなした。そして、右仮処分決定は相当であるから認可されるべきである。

第三被申請人の主張

一  本件仮処分決定は不当、不法である。すなわち、本件仮処分決定のごときいわゆる断行の仮処分決定の発せられる場合、ほとんど例外なく審尋手続が行われるべきであるのに、これがなされておらないのは不当である。

二  (一) 申請人の主張一の(一)(二)の事実は認める。

(二) 同(三)の事実につき、組合事務所が会社構内に存在する必要ありとの見解は誤りである。組合事務所の供与は労働者ないし労働組合の当然の権利ではなく、労働組合法第七条三号但書によつて、ただ、最小限の広さの事務所の供与であれば不当労働行為にならないというにすぎない。それゆえ、事務所を与えるか与えないかは使用者の自由であり、与えるならば最小限であれば許されるということなのである。組合活動は、まつたく使用者の干渉されないところにあるべきで、職場規律その他規制を受け易い会社構内を離れた場所が望ましい形である。

(三) 同(四)の事実中、従前の組合事務所への出入の状況および被申請人が申請人主張の鉄柵を設けたことは認める。

ところで、被申請人が右鉄柵を設けたのはつぎの理由による。すなわち、昭和四三年五月一〇日午後三時頃被申請人峰山製作所構内で組合員の大会が開催されようとしたとき、被申請人の従業員以外の者が入構しようとし、これを阻止しようとした被申請人管理職に対し、ともども多勢で暴力をふるい、その内三名に傷害を負わせて構内に乱入するという事件が発生した。被申請人が有する会社の施設に対する権利は絶対に冒されるべき筋合のものではない。たとえ、従業員であつても会社施設内において争議行為をしていないなら職場の規律に従うべきであり、争議行為をしているなら職場を離脱しているのであるから構内に止まつたり、入構したりする権利はない。いわんや阻止を排除して乱入するのは言語道断である。ここにおいて、被申請人は、構内の施設の保全を考えざるをえなくなつたので柵を設けることにしたのである。暴徒の乱入を防ぐには相手が多数であるから囲りに柵を設け、出入を一、二箇所に制限して、ここで喰い止める以外にない。しかし、組合事務所への通行を藉口されるときは開扉せざるをえず、一旦入れてしまえば、たとえ組合事務所に行かないからといつてこれを排除することは数の上からいつて無理である。また、外部の組合員が組合事務所への通行に藉口して会社施設に乱入、あるいは争議状態に入つたとき組合事務所に寝泊りするなどすれば、これらの保全に万全を期し難い。さらに、同月一一日組合員の八島重夫が酒気を帯びて出勤しているのを発見した大江勤労課長らの管理職がその非をとがめると暴言を吐いたうえ組合事務所に逃げ込み、出てこないという不祥事態も発生している。このような事態が起こるのは職場と組合事務所が直結しているための弊害である。そこで組合事務所には別に出入できる道があるので、被申請人は、組合事務所を構内と独立したものにするため鉄柵を設けたのである。

(四) 同(五)の事実につき、職場の規律を如何に定めるかは使用者の権限に属する。また、申請人は他の労働組合と連絡がとり難いと主張するも、それは申請人が独立の組合事務所をもてばよいのである。

(五) 同二の(一)の事実につき、被申請人が申請人の組合活動を破壊し、または、しようとしたことは絶対にない。年功、能力のある者を昇格させるのは当然で、逆に組合活動をしているからといつてこれをしないとかえつて不当労働行為になつてしまう。今西久和の降格はその任に堪えないためで、業務上の正当な理由による。

(六) 同(二)の事実につき、暴行を働いたのは申請人の組合員である。事件をでつち上げたと主張するが、管理職は全治一カ月の重傷を負つているのであつて、非常識も甚だしい。

(七) 同(三)の事実につき、懲戒委員会は正規の手続で開かれている。

(八) 同(四)の事実につき、労働組合は、一個の独立した組織体をなして活動すべきで、組織を構成する組合員と頻繁に往来する必要があるとすることは自らの欠点を暴露するものである。労働者が憲法に保障されている団結権は、労働者が自ら団結する権利と、他から団結を強制されない権利の二つをふくむ。申請人組合からの脱退者については、団結を強制されない権利が職場と組合事務所とが直結していることによつて犯されるという危険性を考慮に入れるべきである。

二  被申請人が申請人に組合事務所を与えたからといつて、被申請人の峰山製作所における施設管理権はいささかも失われるべき性質のものではない。ただ、組合事務所への通路が他にない場合は、会社の門あるいは敷地を利用することもありえようし、それは当然ともいえよう。それゆえ、申請人が本件仮処分で撤去を求めている鉄柵を除去しなければ事務所への通行不可能というのであれば、これもやむをえないが、何も会社構内を通らなくとも他に通路があれば、申請人において会社の施設管理権を冒す必要も権利もないのである。

本件において、被申請人が設けた鉄柵があつても、組合事務所より公道に出るのは容易であり、その公道上の地点から会社の入口までの距離は約九三米で、所要時間も二、三分にすぎない。組合事務所と工場とは時間的距離的に密着しており、組合活動は毫も妨げられるものではない。組合事務所から公道に通ずる土地は、申請人主張のように、被申請人の所有する土地ではないが、被申請人は右土地の地主から土地の使用承諾をうけているので、被申請人の従業員は自由に出入する権限があり、申請人組合員等の通行は可能である。また、被申請人は、昭和四三年六月二五日組合事務所に便所および手洗所を設けて、組合事務所を利用する者の便宜をはかつた。

このようにして、被申請人が組合事務所を閉鎖したというならばともかく、かえつて申請人は独立した組合事務所を得られたのであるから、これを喜ぶべきであつて、鉄柵を除去し、会社構内を通行しなければ組合事務所に出入できないわけでないから、本件仮処分の保全の必要性は存しない。鉄柵のない状態で放置すると、何人も正門の警備を避けて公道より組合事務所を通り抜けて構内に侵入しうることになつて不用心きわまりないことになる。

三  以上の次第であるから本件仮処分は取消されるべきである。

第四疎明<省略>

理由

一  申請人は、被申請人会社峰山製作所に勤務する労働者によつて昭和二三年に結成された労働組合であること、申請人は、被申請人会社峰山製作所構内に組合事務所をもち、従来、その出入は会社構内を通行してまつたく自由にしており、組合員は自己の作業場から直接容易に組合事務所に出入できたこと、ところが、被申請人は、右組合事務所の出入口にあたる別紙図面表示の赤斜線部分に高さ二米一〇糎の長さ五米五糎に及ぶ鉄柵を設けたこと、したがつて、会社構内からは組合事務所への出入ができなくなつたことは、いずれも当事者間に争いがない。

二  申請人は、被申請人が組合事務所の出入口に鉄柵を設けて申請人組合員および申請人がその組合活動のため必要と認めた者が会社構内を通行して組合事務所に出入するのを妨害しているのは憲法上保障された労働者の団結権の侵害にあたる旨主張し、その妨害排除を求めるので検討する。

成立に争いのない甲第一ないし一四号証、証人山田雄彦の証言に弁論の全趣旨を総合すると、申請人と被申請人との間においては昭和四三年一月頃から被申請人の示した合理化案をめぐり紛議が生じていたこと、そして、同年五月一〇日、申請人の組合員が会社構内広場で職場大会を開催しようとした際、その集会に何名かの他の労働組合員が参加していたことなどから、被申請人の管理職らの行なつた入構阻止をめぐり、多少のいざこざが惹起されたこと、しかるうち、同月一二日突如被申請人において、前記のとおり組合事務所の会社構内に面する出入口に鉄柵が設けられたこと、組合事務所は申請人が被申請人から貸与を受けているものであるが、被申請人峰山製作所構内のほぼ南側で更衣室に並んであり、その横にやや間隔をおいて屋外変圧器の囲いがあること、組合事務所の裏側は水路をはさんで民家が立ち並び、民家は公道(府道)に面しているが、右組合事務所裏側の水路から公道までの間の民家の立ち並んだ土地は、被申請人の所有土地ではないこと(この点は当事間に争いがない)、組合事務所の会社構内に面する出入口に鉄柵が設けられてからは、申請人組合員らは、やむなく右民家の軒先を通り、水路を渡り(もともと、組合事務所と屋外変圧器の囲いとの間には水路沿いに金網の柵が設けられ民家側から会社構内への立入は遮断されていたのだが、被申請人は、組合事務所出入口に鉄柵を設けた際、右水路沿いの金網の柵を取り外した)、組合事務所裏側にまわり、右鉄柵沿いに事務所入口に達し、かようにして組合事務所に出入していること、したがつて、会社構内にある作業場等から会社構内を通行して組合事務所に出入することはできず、一旦、会社正門から公道に外出し、公道から前記民家の軒先を伝わつてはじめて組合事務所に出入できること、以上の事実が一応認められる。

右事実によれば、申請人の組合事務所は、その存在場所こそなお被申請人の会社構内にあるとはいえ、被申請人が組合事務所の会社構内に面する出入口に設けた鉄柵のため、会社構内からは自由に出入ができなくなつているのであるから、従来と異なり、申請人の組合事務所の使用や利用は大幅に制約されたものになつたといわなければならない。

ところで、労働組合にとつて組合事務所は組合活動の本拠であつて、組合の維持運営にとつてなくてはならないものである。申請人もそうであるように、いわゆる企業別組合を常態とするわが国の組合においては、企業内の組合活動が中心とならざるをえないので、組合事務所は会社構内にあつてこそ、はじめて従業員たる組合員との接触を保つことができ組合活動の本拠となりうるものである。そうだからといつて、もとより、常に会社構内に組合事務所が設置されることを許容する義務が使用者に存するとまではいえないけれども、使用者は施設の許すかぎりにおいて会社構内に組合事務所を設置することを容認すべきであろうし、本件のように、申請人に対し被申請人がその会社構内において組合事務所を貸与していた以上、これによつて申請人は組合活動の場所としての機能を果しているのであるから、使用者である被申請人は、正当な理由もないのに、従来に比べて組合活動に不利な施設に変更することは、組合の運営に対する介入であつて、憲法上労働者に保障された団体権の具体的構造を表現したといえる不当労働行為(労働組合法第七条三号)が成立するとしなければならない。この理からして、前記の被申請人が組合事務所の会社構内に面する出入口に鉄柵を設け、申請人の組合員らが会社構内から組合事務所に出入できなくしたことは、正当な理由がないかぎり、不当労働行為にあたるといわなければならない。

被申請人は、右鉄柵を設けるにいたつたのは、暴力事件の発生等があつたし、とりわけ外部の者に組合事務所への通行に藉口されて会社構内に立入られることは会社施設の保全に万全を期し難い、会社構内を通行しなくとも別に組合事務所に通ずる通路が他にあるので設けたものであつて、申請人が被申請人の施設管理権を冒す必要はない旨主張する。しかしながら、なるほど、前記のとおり、事実上組合事務所の裏側にある民家の軒先を通行すれば会社構内を通行しなくとも組合事務所に出入することができるとはいえ、もともと右民家のある土地は被申請人の所有する土地ではないし、たとえ、被申請人において右土地を通行できる権限を土地所有者から受けているにせよ、元来組合事務所への出入は会社構内を通行しなければできないものを、殊更に組合事務所出入口に鉄柵を設けてまで会社構内からの出入を禁じてしまうことに首肯すべき特段の理由は見出させない。また、外部の者がただたんに組合事務所への通行に藉口して濫りに会社構内に立入るとの主張事実を認めるに足る疎明もない。(なお、労働組合は組合活動のため社会観念上通常必要と認められる範囲内では、組合事務所を自由に使う権利があるといえるので、組合活動に必要な限度で外部団体員等の組合事務所への立入を組合の判断で許すことができ使用者もこれを阻止できない。ただ、組合事務所が会社構内にあるときの外部団体員等の組合事務所への出入は、会社構内への立入が伴なうので、これらの者に資格を明らかにしてもらうとか、会社構内における組合事務所への通路を限定するなどのことは許されよう。)してみると、被申請人の主張するところは前記正当な理由にあたらないというべきである。

以上のとおり、被申請人は、組合事務所の出入口に鉄柵を設け、もつて申請人の組合員らが会社構内を通行して組合事務所に出入しているのを妨害しているといわざるをえず、かような行為は、組合の運営にも介入する不当労働行為というべく(前記のとおり、従来の慣行を一擲し、ことさらに組合事務所に鉄柵を設けたことから被申請人には支配介入の意思が認められる)ひいて申請人の団結権を侵害しているものというべきである。

してみれば、申請人は被申請人に対し前記鉄柵を除去し、申請人組合員が被申請人会社構内を通行して組合事務所に立入ることの妨害排除を求める権利があり、申請人において組合事務所を円滑に使用できないことは重大な損害と認められる。

三  そこで、申請人の本件仮処分申請を認容し、「被申請人は、別紙図面表示の赤線部分に施した鉄柵を除去し、申請人の組合が被申請人会社構内を通行して申請人組合事務所に立入ることを妨害してはならない。被申請人において本命令送達の日から二日内に右鉄柵を除去しないときは申請人の委任した執行官は右鉄柵を除去することができる。」との本件仮処分決定は相当である。(なお、申請人は、申請人組合員の外、「申請人がその組合活動のため必要として認めた者」が会社構内を通行して組合事務所に立入ることの妨害排除の仮処分を求めるが、本件のように、組合事務所への立入は、必然的に被申請人会社構内への立入を伴うものであるので、ただたんに「申請人がその組合活動のため必要として認めた者」といつた限定では、当事者間に紛議をまぬがれず、一義的に解釈すべきを相当とする本件仮処分にあつては相当でないので、この部分の仮処分申請は認容しない。また、被申請人は本件仮処分決定が被申請人の審尋なくしてなされたのは不当不法と主張するが、仮処分決定にあたり、必ず当事者を審尋しなければならないものでないことは明らかであり、審尋の要否は事案によりけりであるから、該主張は理由がない。)

よつて、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 坂詰幸次郎)

(別紙図面省略)

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